川原 翼

個人データ
名前川原 翼(かわはら つばさ)
 主人公「シャール」に密か(?)に思いを寄せていた15歳の家出少女。はっきりと1965年生まれと記されているので2004年現在は39歳という事か?
 シャールの友人「ジェラール」による翼クンの紹介は…

 翼くん フルネーム不明 ここへきたいきさつも不明 いいたくないらしいのできかないけど料理の腕は確か 日本人 15歳

 実際、フルネーム、家出の理由等が明かされるのはかなりの後半で物語中、最も正体不明の人物だったのかもしれませんね。
 詳細記すわけにもいきませんが、人間不信というか人間恐怖症となり街でうずくまっていたところをシャール君に拾われ…居候の身に。
 閉ざされていた心はシャールの下で暮らしていくウチに開かれ、そしてそれはそのままシャールへの恋心に。

 一人称こそ「ボク」ですが、いわゆる「ボク娘」さんではなく、ごくごく普通の女の子といった風情。主人公も、その友人のジェラールも最初は男の子だと思ったようですが……見た目どう見ても女の子なんですが…。まあ、見た目は男の子みたいだという設定だと受け止めましょう。…ただし、初見はともかくとして、何となく感じる雰囲気というものは「女性」なので、間違われてたままでいるという事はないはず。
 現実として主人公は確かにシャール君…そしてその補助…福主人公としてジェラール君がいるのでしょうが、真の主人公はこの翼クンなのではないかと思われます。心の動きが最も緻密に描かれているキャラなので。

もちろんまだボクは好きだとは言ってないんだけど…うちあけて完全にふられちゃうのがこわいんだ…
そうなっちゃうよりは今のままの方が少しは希望がもてるもの…

 今の関係が壊れるのを恐れ一歩も前に進めない状態。ここから何度も何度も先に進もうとしても最後にその歩みを止めてしまう。
 高熱の中思わず言ってしまった「好き」の一言。返答をしてくれないシャール。悩む翼クン。

ボクったらせっぱつまってつい「好き」なんていっちゃって…
でもなんにも答えてくれないっていうのは やっぱりボクじゃだめだってことなのか?

 なかなか前に進まない。でも、確実に少しづつ前進していく2人の関係。翼クンのシャールへの想いはこの台詞に集約されるかと。

シャールくんてほんとにボクを女の子扱いしてくれるんだ
くれるけど…くれるけどでも女の子だからといって特別扱いはしない
シャールくんといるとどんどん理想の自分に近づいていける

 自身の「女の子らしさ」をあまり自覚しておらず自ら「シャールくんとならんだらまるで弟なんだもん」などと言ってしまう子なので、自分自身を普通に女の子として見てくれるシャールが嬉しい。もちろん、それだけじゃない…シャールの在り方、生き方全てが好き…なんですが、翼クンの場合。だからこそ、そんな素敵な存在であるシャールと一緒にいれば自分に素直になれる、最高の自分でいられる。
 そして物語終盤、はっきりと自分の意思で告げる。

好きだよ……

 と…そして、シャール君の返答は…………。

 翼クンは恋愛SLGのヒロインのような長所ばかりの少女ではなく、いつでも笑みを絶やさない少女でもなく、そして優しさに満ち溢れた少女でもない。普通の15歳(+α)の少女なのである。

「あんなに憎らしいと思ったことはない こんなに好きだと思ったことも……」

出展
コミック:白泉社文庫 エイリアン通り 1〜4巻 /白泉社
著者:成田 美奈子