BLUE SEEDはもっと評価されるべき作品ではないだろうか?
「日本神話を題材にした作品として?」
 正直言って蒼奇魂BLUE SEEDはそれほどの作品じゃない。けど、BLUE SEEDはかなりの名作だと思うんだな。BLUE SEED2は駄作だけど。
「面白いとは思うけど、特別どうこうってほどじゃないんじゃない?」
 甘い!荒神という化け物相手に無力な人間は反荒神たる草薙の力に頼るしかない。大自然が生み出した怪物に科学の力は意味を為さない。普通はこうくるよな。で、科学に頼り地球を破壊する現在の人間批判に走る。KOFがいい例だな。
「’97のエンディングだね。あれは読んでいて恥ずかしかったなぁ、あまりにもお約束で。格闘ゲーマーに人類批判のエンディング見せてどうするつもりだったんだろ?」
 そう思うだろ。BLUE SEEDも題材的に結局、荒神は人間の愚かさが生み出した魔物なんだ!これからは自然との共存を考えないといけないんだみたいな偽善めいた終わり方をしてもおかしくなかったはず。でも違った。反荒神たる草薙の実力はヒロインを護るべきヒーローのものじゃない位に低かった。だから人間様の登場となる。国土管理室の知恵と科学で未知の怪物を撃退する。確かに人間なんてそんな大層な存在じゃないし、反省すべき点が多い種族だけど、人間は科学と共に進化してきてるんだ。その科学を否定する事は人類そのものを否定する事にしかならない。自然との共存も大事だけど、それが現在の人類の批判になっちゃいけないんだ。誰だってわかってるんだから、今のままじゃいけないって事くらいは。だからこそ現在の人間がどこまで出来るかを追求した感のあるBLUE SEEDは偉大なんだよ。何だかよくわかんないヒーローがわけのわからない必殺技で敵を倒すのではなく実現可能な科学の力で怪物を撃退するんだ。
「でも、それでいて神秘性もあるんだよね」
 確かに最終的には奇稲田の力による奇跡で幕を閉じたわけだけど、科学と自然、そして奇跡の調和とでもいうべき絶妙なバランスだったと思うよ。古代から続く祭りとは何だったのか、とかちゃんと研究して作ってる。神話と日本の風俗をちゃんとわかった上で作ってるから、こういう事が可能になるわけだ。紅葉が幣帛を振ってマツリウタを歌う場面とかはアニメ史上に残る名場面だと思うな。
「クシナダパルスとかかなり怪しい単語もあったけど、まあいいか」
 この物語の面白い点ってのは奇稲田と八俣の大蛇がそれぞれ人間サイドと荒神サイドに1人づついた事だ。まあ、草薙は大蛇の魂を受け継いだだけで正に草薙の剣に該当するキャラではあるけど。
「オロチである叢雲がスサノオを復活させようとしていたとか、荒神の大将がスサノオだとか、神話との違いをどう解釈するかも面白いかも」
 何故、クシナダに荒神を鎮める力があるのか、とか。BLUE SEEDを元にして神話を作る事も可能だ。いや、作るんじゃなくて日本神話を書き換えるというべきかな。
 おお、そうだ。KOFだが、以前にKOFと月華と神話のつながりを書いたけど、八咫一族について新たな仮説が出来上がった。
「前はオロチの裏切り者である草薙一族を監視する為に四神の一族から送られた一族だって言ってたっけ?わからない人はここを参照ね」
 ここってどこだよ一体?
「あー気にしないでいいよ。話してるとわかんなくてもHTML化されるとわかるって寸法だから」
 なんだかな…で、まあ、その仮説は変わらない。でも、草薙はともかく、八尺瓊と八咫は何が三種の神器かよくわからないんだ。で、考えた結果、八咫の娘は絶対に双子で産まれてくるんじゃないかなって。
「確かにちづるにも双子のお姉さんがいたらしいけど、その仮説はどうして?」
 つまりは鏡だな。そして八咫一族はアマテラスの血を引いてる一族なのではないかと。
「また、随分と突飛な」
 確かにな。けど、草薙一族がスサノオに該当する以上は、それぞれ三種の神器以外にもう1つの顔があると思うわけだよ、私は。ただ、草薙が日輪をシンボルにしてるんで、そこが判断の難しいところだ。アマテラスは太陽神だからな。
「じゃあ、草薙ってスサノオ兼アマテラス?」
 難しいんだよなぁ。草薙一族にはスサノオたる男子とアマテラスたる女子が双子として生まれないといけないような気がするが、京には姉妹なんていない。元々、神話では八咫の鏡ってのは岩戸に閉じこもったアマテラスに対してアマテラス自身を鏡に映してアマテラスの代わりの女神がいるんで、あんたはもういらないよって騙す為に作ったものだ。だから草薙をアマテラスとすると、その草薙を監視する八咫って事で神話と結構合致するんだよね、草薙を映す鏡が八咫って事で。でもやっぱり草薙はスサノオだから、八咫は日輪である草薙を監視する太陽神アマテラスなのかな、と断定したわけ。で、オロチを封じるアマテラスたる姉と、そのアマテラスを映し草薙を監視する妹がいるのではないかと。だからちづるはオロチを封じておく事が出来なかった。
「なるほどぉ…じゃあ、岩戸神話はどうなの?」
 岩戸の神話は実際にはアマテラスたる八咫が篭ったのではなく、日輪である草薙を封印した事に由来しているのではないかと見る。岩戸神話は元々、高天原で暴れるスサノオに怒りが頂点に達したアマテラスが任務放棄したって話だろ。つまり何故、草薙一族がオロチを裏切ったかといえば、四神の支配地域にまで攻め入って好き放題に暴れていた草薙は八咫一族に捕まり封印の巫女か何かに封印されてしまい、封印を解いてほしければオロチを裏切れと強要されたからだと考えている。
「となると、残る八尺瓊はツクヨミか。まあ、これは納得だね。月をシンボルマークにしてるんだから……でも、八尺瓊の勾玉って何?」
 これが神話と合致させるのが実に難しいんだな。八神一族は草薙の分家なんだよな、この時点で既に解釈困難だ。草薙の剣と八尺瓊の勾玉には何のつながりもないはずだからね。一応は考えたんだけど勾玉である必要性がないんだな、これが。これはまだまだ考える余地あり。
「まあ、とりあえず考えた事を言ってみてよ」
 つまりは最初の最初から八尺瓊は裏切り者だったってわけだよ。草薙が八咫に捕まったのは八尺瓊が裏切っていたからだと思うんだ。神話では八尺瓊の勾玉は八咫の鏡同様に岩戸神話で初登場するからな、アマテラスを表に引っ張り出す為に。それから考えると封印した草薙を寝返らせるのに八尺瓊が八咫に協力していたと見るしかないだろう。
「真っ先にオロチを裏切っておいて、それでまたオロチに寝返ったんだ、八尺瓊は」
 ツクヨミの神格はアマテラスやスサノオと同じなのに、何故にツクヨミだけ全然逸話が残ってないかといえば裏切りの一族だったから、記録を抹消されたんだろうね。ただ、異様に草薙を恨んでるし、何かあったんだろうが、それは神話からは見えてこない。四神の一族であるクシナダに惚れてオロチを裏切ったものの、草薙にクシナダをとられちゃって、仕方ないから草薙を恨みつつオロチに戻ったとかそんな下らない理由だろう、おそらく。
「と、したら四神もそれぞれ日本神話の神の誰かに該当するのかな?」
 難しいね。四神の概念は中国から入ってきているものだし、日本神話では四神の存在は抹消されてると見るべきだな。ただ、黄龍はイザナギではないかなって思ってる。十握の剣は様々な神が使ったけど、基本的にはイザナギの剣として知られているし、アマテラスやツクヨミに指示を与えたのもイザナギだから。
「と、するとイザナミもいるわけだよね」
 地獄門の向こうにある世界の支配者だな。サムスピも混ぜていいなら、暗黒神アンブロジァがイザナミかもしれんな。でも問題は封印の巫女の存在だな、あいつはどう解釈したものか。
「まだまだ考える事はいっぱいあるって事かな」