真侍魂のナコルルステージ。クマさんに乗っているプチナコ…見て、ほとんどの人は思ったはず…続編では「PC」になるな、って。
 ナコルルのEDを見て理解したと思います。ナコルルを消してしまったので、その代わりのキャラとして一足先に出しておいて、続編で「何でナコルルに妹がいるんだ!」と言わせない為…最初から計画通り…続編で絶対にPC化されるはず…オプションはもちろん「クマさん」!と。
 そして続編の斬紅郎無双剣。プチナコ=リムルルは確かにPC化されました…でも、ナコルルの代わりじゃない…ナコルルも出演していて…そしてオプションは「クマさん」ではなく「氷」…多くの人は思ったはずです。これ「リムルル」じゃない、と。

 それはそれとして今回はリムルルの話でもナコルルがしつこく登場してきた話でもなく「クマさん」の話。何でリムルルのオプションになれなかったのか。

 その為にはあの「クマさん」の正体を知る必要ありますよね。そもそも「熊」という動物…無闇に人を襲うような事は無いですが、決して大人しいわけでもなく人に対して友好的でもありません。サーカスで育てられて人に慣れているなら話は別ですが…。
 そしていくらナコルルが自然とお友達だと言っても「熊」がナコルルの応援をする事は無いでしょう。もし、応援だと言うなら彼女が劣勢となった時に対戦相手に襲いかかるのではないでしょうか?それをしないでただ見ているだけ…というより「リムルル」一筋!ですね、あの「クマさん」。
 これはどういう事なのか?つまりあの「クマさん」はカムイコタンで育てられたという事です。何故、コタンで熊を育てているのか?それはアイヌを知らないとわかりにくいかと思うので少し説明しようと思います。えと、以下の解説における「カムイコタン」とはナコルル達の集落の事ではなく「カムイの住まう世界」と思って下さい。

 アイヌには「カムイ」という考え方があります。「カムイ」は日本語にするなら「神」となりますが…日本人的には「神」よりも「精霊」という存在に近いかと思います。
 万物には魂があり、精神があります。生物、非生物の区別はありません。この考え方は現在の科学から見て正しいかもしれませんが、それはそれとして…。
 アイヌはカムイと身近に接しています。そしてカムイを敬っています。カムイはそんなアイヌに恵みを与えてくれます。それが自然であり、食料であり、家だったりします。
 そして「熊」は「位の高い」カムイです。アイヌの考え方では「生物」も「非生物」も魂の器でしかありませんから、「熊」は「熊」という器を持ちカムイコタン(カムイモシリ)からアイヌコタン(アイヌモシリ)へとやって来た訪問者という事になります。日本的にいえば「マレビト」…に近いかと思います。
 「熊」は人に大いに恵みを与えます。毛皮…そして肉。「熊」は毛皮の中に肉を持った「カムイからのプレゼント」なわけです。それをアイヌの元へと運ぶ為にカムイの魂が入っているというだけの事。
 これでわかったかと思いますがアイヌにとって熊は神聖な存在であるわけです。それを「オプション」として戦いに駆り出すなどとんでもない!という話になりますね。
 では、その神聖なる「位の高いカムイ=熊」を殺してしまっていいのか?それはもちろんいいのです、「その為」にこそ「熊」は存在してるわけです、アイヌに恵みを与える為に。「殺す」のではなく「アイヌ…人間の世界」から「カムイ…神の世界」へと送り返しているわけですから。
 この「熊…カムイの魂」をカムイコタンへと送り返す儀式が「熊送り」と和訳されている「イオマンテ」なわけですが…。「熊」はアイヌがいくら「カムイ」だと言ったところで「生物」ですから、生命をつないでいっています、子孫を残していきます。つまり「親熊」を狩れば「子熊」も一緒についてくるわけです。しかし、子熊を「送り返し」ても恵みは小さいですから、コタンで飼育し成獣となったその時にこそ送り返すわけです。イメージ的にはマヤの「名誉ある生け贄」ですね…もちろん、考え方は全く違うのですが。

 おわかりになりましたでしょうか?つまり真侍魂のナコルルステージ背景にいる「クマさん」は子熊の頃から大事に大事に育てられ…そしてイオマンテで送り返される運命にある「カムイ」だったわけです。子熊の頃から育てられていたので大人しく人間の世界でナコルルの戦いを観戦していられるわけですね。…そして、どう見ても成獣ですから、半年もすれば送り返されます。その意味でもリムルルと共に闘えるわけもなかったわけです。…斬紅郎無双剣は真侍より過去の話ですけどね。

 考え方の問題なのですが、現実にリムルルの使う「氷」もまたカムイであるはずです。氷の精霊との事ですが…精霊という概念は先に言った通り「カムイ」として当てはまりますから。
 まあ、それはいいのですが…疑問に思いませんでしたか?「何で熊だけ送り返す?」と…。
 実は…「イオマンテ=熊送り」だけが有名ですが、送り返してるのは熊だけではありません、非生物も送り返します(これは日本でもやっているかと思いますけどね、考え方も同じだと思います)し、「狼」や「鷹」もまたその対象です。位が高いわけです、狼や鷹も。……ママハハとシクルゥ…大丈夫でしょうか?
 侍魂や真侍では「鷹に掴まる」ではなく「鷹に捕まる」と表記されているのをご存じでしょうか?これが意味するところは…
「カムイたるママハハの命令に従ってナコルルが動いている!」という事なのです!!…多分。「行って、ママハハ!」などとナコルルは言っていますが…実はママハハに操縦されているのです!!
 おかしいとは思いませんでしたか?ナコルルの怒りゲージがMAXになったからといって何故「ママハハ」が「イルスカヤトロリセ=怒れる鷹の輪舞」などという大技を使えるようになるのか…そう、それはつまり…あの怒りゲージは「ママハハ」のものであり、ナコルルはママハハに操縦されて「もう、許せない!」と口走っているに過ぎないという事だったのです。