世界有数の財閥である豪血寺一族には、その家訓に従い、5年に一度次期頭主決定戦を開催するしきたりがある。この闘いで優勝した者は一族の頭主となり、豪血寺すべてにおける絶対的な権力と莫大な財力とを握ることになるのだ。それは即ち、親が子を、子が親を倒すという凄まじい骨肉の争いに至ることを意味していた。昭和の初めより行われてきたこの決定戦であるが、その実、頭主になった人数というのはそう多くはない。と言うのも、毎回、ほぼ同じ人物が頭主の座に就いてきたためである。その人物とは、当年取って齢百歳になる「豪血寺お梅」。
 一時、双子の妹「お種」らに頭主の座を譲ったこともあったが、すぐに奪還、ここ二十年は辛うじて負け知らずという具合で頭主の座を守ってきた。
 時は西暦2015年、この豪血寺の頭主制度に一大転機が訪れる。…事の始まりは、豪血寺お梅とお種の両者による二人頭主即位にある。頭主の豪血寺お梅が突然、妹・お種と力を合わせて一族を統治すると宣言したのだ。
「わしら豪血寺一族は殺伐とした醜い争いばかりを続けてきた。しかし、このまま『助け合う心』を忘れていては、互いに潰し合うことで一族を滅亡に導いてしまうと悟ったのじゃ!そこでわしらは心身一体、二人で一人となって頭主につき、協力して豪血寺を治めていくことを宣言する。」
 もともと確執のある二人だっただけに、また、共にかなりの高齢で体力の衰えが見られたこともあり、親族の者は「本当に二人が力を合わせるならば」と、その宣言を認めてしまう。……そして月日は巡り、全世界の豪血寺の血を引く者に「次期頭主決定戦」の知らせが届く時期になった。
「皆も知っての通り、豪血寺頭主に必要なのは強さだけではない。協力する心も必要なのじゃ。よって今回は、二人一組となってわしらに向かってくるが良い。2対2で闘うのじゃ!」
 二人ならば、弱り気味と噂されるあの老婆コンビを倒せるかもしれない!!にわかに喜んだ一族の者は、最後の一文を読んで愕然となった。
「…なお、わしらは二人で一人と宣言した以上、あと一人呼んでペアを組むことにするので、参加者は心すべし!」